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カネカ育休明け転勤会社公式見解の謎


育休明け転勤について、元社員の妻がtwitterでパタハラと呟いたことに対するカネカの公式見解が出された。これは弁護士が入った文章であるだろうから、ここに書かれたこと書かれていないことを、言外の意味も考えながら見ると、色々浮かび上がってくるはすまなので、見てみる。

公式見解

カネカのウェブのトップページに公開されているが、トップページだけにいつ消えるかもわからないので、トップページのみでなく、公式見解が引用されている記事のリンクも載せておく。

カネカのトップページ

http://www.kaneka.co.jp

 

カネカが「育休明け転勤」問題に公式見解「当社の対応に問題は無いことを確認」

https://m.huffingtonpost.jp/amp/entry/story_jp_5cf88290e4b0e3e3df151ac8/

ハフポスト日本版 2019年06月06日

カネカが言外に言っていること

公式見解中、

着任日を延ばして欲しいとの希望がありましたが、元社員の勤務状況に照らし希望を受け入れるとけじめなく着任が遅れると判断して

と、

育休前に、元社員の勤務状況に照らし異動させることが必要であると判断しておりましたが、

の2箇所に、「元社員の勤務状況に照らし」という記載がある。この表現には、元社員の勤務状況が、現在の職務には適さないから転勤させるというニュアンスが滲んでいる。カネカにとって異動が、異動先の業務内容が余人をもって代え難いという前向きな理由ではなく、どちらかというと後ろ向きなものに聞こえるようになっている。こらはかなり突っ込んだ表現である。公式見解であるのだから、弁護士を入れた文章のはずである。そのような文章で、個人をディスるような内容を言外に含ませていることは注意しておくべきである。

パタハラでなくともハラスメントには違いないのでは?

カネカは、問題ないという結論のようだが、確かにパタハラではないのかもしれない。しかし、単なる「元社員の勤務状況に照らし」た異動であったならば良いが、それが、新居に越したばかりで赤ちゃんが生まれたばかりの社員に対し、転居を伴う異動とする必要があったのだろうかという疑問が生まれる。異動が、余人をもって代え難いパターンでないなら、異動先、異動時期のどちらかは調整可能なはずである。それが、家庭の事情を一切考慮しないというより、狙い澄ましたタイミングに見える異動を命じている点が、ハラスメントに見えてしまう。元社員は共働きのようであるから、新築の家に入居直後の転居を伴う異動となると、家族で引っ越すならば、保育園の問題や妻は仕事を辞めるか否かの問題になるし、赤ちゃんがいるにもかかわらず単身赴任というのも妻への負担が大きくなることはわ分かり切っている。カネカの公式見解は、余人に代え難いパターンでないことを匂わせすぎて、この辺りが甘くなっている。異動先、異動時期の両方で元社員に大きな不都合になるような異動を、異動先が元社員でなければ務まらないわけでもないポジションに異動させるのは、パタハラではなくとも、別なハラスメントにあたるのではないだろうか。その意味で、カネカの公式見解は、パタハラでないことにしか興味があっていない点でアレだと思われる。

会社の読み違い?

不確かな情報であるけれど、元社員の妻のtwitterでは、起業を目指していたとのつぶやきもあったようである。カネカは、それを知っていたのではないだろうか。しかも元社員は年度内の退社を匂わせたりしていたのではないだろうか。それが公式見解にある「元社員の勤務状況に照らし」に滲み出ているように思われる。どうせしばらくして辞めるのなら育児休暇明け早々に会社を辞めて欲しくて、悪条件の異動を突きつけて退職を促したということは考えられる。これ自体ハラスメントと思われるけれど。完全に仮説であるが、元社員が復職して1〜2ヶ月経った6月に退社するということを考えていたのではないだろうか。そしてそれをカネカは知っていたと。カネカは、直ぐ辞める社員に復職後の仕事をアサインするのは馬鹿らしかったのではないだろうか。引き継ぎしたと思ったら引き継ぎ直しが必要になるのだから。こう考えると「元社員の勤務状況に照らし」というのが本当に効いてくる。しかし、会社は読み間違えた。元社員は、ボーナスをもらってから辞めると決めていたのだろうから。そのためには、6月までは辞められない。そんな両者の思惑の一致を見るための異動であったのではと思う。ならば、転居を伴わない異動にするだけでよかったのにと思うが、様々な事情から「元社員の勤務状況に照らし」て考える必要があったということだろうと。例えば育休も取ってボーナスももらって辞める者の存在の他の社員に与える影響とか。

カネカが言っていないこと

元社員の妻は、退職にあたり有給休暇の消化が認められなかったことにも言及していたが、公式見解ではそれについて触れられていない。「元社員の勤務状況に照らし」と2度も書いていながら、この有給休暇の消化について公式見解で触れていないのは、弁護士を入れているであろう文であることを考えると、カネカにとって不利な点なのだろう。まあ、育休取って起きながら辞めていく者に有給消化などさせるかという意思が露骨に出た対応を、人事か上司がしてしまっているのではないだろうか。しかし、これを公式見解で触れなかったのは良くない。元社員の妻の主張に全て反論したことにならないから。しかもここは労務管理的に重要なところであるし。

公式見解の構成

公式見解の骨格

この公式見解は、
当社元社員ご家族によるSNSへの書き込みに関し、当社の考えを申し上げます。
と始まり、その後、段落ごとに番号を振った文章が5つあります。この5つはカネカの主張であり、それぞれが独立した内容となっている。

5つの主張

この5つそれぞれの段落の主張を抜き出すと、以下のようになります。(勝手に抜き出しまとめています)

1.社内監査役及び社外監査役が弁護士を含む調査委員会からの報告を受け当社の対応に問題は無いことを確認した。
2.転勤の内示は、育休に対する見せしめではない。当社が退職を強制したり、退職日を指定したという事実は一切ない。
3.育休をとった社員だけを特別扱いすることはできないので、結果的に転勤の内示が育休明けになることもあり、このこと自体が問題であるとは認識していない。
4.社員の転勤は、最終的には事業上の要請に基づいて決定される。
5.本件では、育休前に、元社員の勤務状況に照らし異動させることが必要であると判断していたが、本人へ内示する前に育休に入ったために育休明け直後に内示することとなった。また、着任日を延ばして欲しいとの希望があったが、元社員の勤務状況に照らし希望を受け入れるとけじめなく着任が遅れると判断して希望は受け入れなかった。 会社は着任後に出張を認めるなど柔軟に対応しようとしたが、退職願が提出されたため、この後は、転勤についてはやり取りがなされなかった。

本音と建前

文章の構成を見ると、5.が最後であるのに一番抜き出しがが難しい。なぜか、元の文章が5.だけ突出して多いから。1.の文章の2.5倍ほどの文字数。というより、5.だけというより、1.から5.に進むに従って文字数が多くなっている。これは意図的でしょう。で、1.では当たり障りのないというか、建前的な発言をしている。段々と、本音というか、本当に言いたいことを書いていくスタイル。建前だから最初は淡々と書くのであるが、本音になると熱く語ってしまうという。オリジナルはカネカで作って弁護士がチェックしたのでしょうが、本音溢れてしまっています。弁護士さん良い仕事してます。

本音である5.のエゲツなさ

ということで強引ですが、この公式見解は、5.にカネカの社としての本音が詰まっていると考えて良さそうです。その中で一番カネカが、主張したいのは、この5.の中で2度も出てくる「元社員の勤務状況に照らし」という記述です。これ、大事なところだから2度言いますのギャグですかね。公式見解を読む側は、1つの段落に、カネカがこの文言を2度入れた意味を考えるべきですね。勢い余って2回書いちゃった〜というのはあり得なくもないですが、これ、意図的にやってますね。1回だけでもエゲツなさのある表現なのに2回も同じ段落で書いている。わざとやっちゃってるな〜としか理解できないです。これは元社員へというより、ネットで騒いでいる方々へのメッセージでしょう。

第三者には分からない

結局、互いに都合の良いことしか明かしていないから、第三者には何が起きているのかは分からない。