なんでこんなことしたのか。一見意味不明だけれど、まあ、関電ではなく木を切った個人に旅館に対する何らかの感情があった以外に合理的理由が見つけられない。
- 記事
- 被害の範囲
- 取り返しのつかないことを分かっていてやることの精神構造
- 加害者
- ニュースから分かること
- 良い仕事をした防犯カメラ
- 杜撰すぎる"犯人"
- 正当行為と考えている可能性
- 元々モメていた可能性
- ニュースから分からないこと
記事
被害の範囲
これ、被害の範囲は、どのように定めるのでしょう。藤の木を元に戻すことはできないので、被害はお金に換算するしかないですが、これは単なる藤の木ではなく、旅館の玄関に当たる場所のシンボル的なものであるので、営業的価値があります。まあ、藤が咲くシーズンの売り上げにおける藤の木があることにより得たと思われる金額を算出して、それを元に今後何年分とか計算するのでしょう。しかし、この藤の木、樹齢30年を超えているそうで、そのような樹の藤棚の商業的価値をどう計算するのか。あと20年すれば「我が旅館にはな、樹齢半世紀を超える藤棚があります」と営業できたものが、植え替えすると、20年しか経っていない、つまり現状の3分の2しか経ていない藤棚が育っているに過ぎないわけです。
取り返しのつかないことを分かっていてやることの精神構造
植物は生きているのだから、根に近いところから切断すれば、もう元には戻らないことは切った人間は分かっている。分かっていて切っている。これが本当に怖い。停電の恐れがあるのならば、敷地の管理者に許可を取って、必要な範囲のみを切るべきである。藤棚の部分など残して十分に停電の恐れをなくすことができたはずである。それが、許可なく告知なく、旅館の敷地に入って、必要な範囲を越えて根元から切っている。どうしてこんなことができるのか。停電の恐れという合理性を完全に逸脱している。藤棚は、棚に根を張っているので、盆栽とは違い、枯れたからといって、次の日に新しい樹を持って来て置き換えるようにはいかない。そして、30年の年月で生まれた年輪、風格。このような価値は、単純に器物損壊という言葉では表せないものを持っていると思われます。しかし器物損壊で警察に届けているということもあり、弁護士登場の場面でしょうが、モメそうですね。器物損壊で訴えているところがもどかしいですが。
加害者
テレビの前で何度も切断した事実を認めてしまっているので、法人としてみれば関西電力が加害者で間違いないです。しかし、個人のレベルで誰が原因であったのかを考えると別なことが見えて来ます。ニュースでは触れられていないが、これは誰の判断で実行されたのであろうかと考えてみると何かがわかると思います。関電という大企業であるので、何かコトを起こす場合、必ず決裁がなされるはずです。仮に決裁を経ずに担当者レベルで何かを実行するのであれば、緊急性が求められる等の条件が定められているはずです。決裁を得ていたら重大な損害が発生するといった緊急性です。
ニュースから分かること
担当者が勝手に切りました、担当者の問題です、監督不行届でしたと個人に収束させることを関電は言いたいと思いますが、それを言えないようでおる。関電も何でこうなったのか分かっていないか、担当者がとてつもなくおかしな考えで突っ走ったかのいずれかでしょう。
良い仕事をした防犯カメラ
この事件は防犯カメラが無ければお蔵入りしていたはずです。防犯カメラが本当に良い仕事をしています。というか、これ、旅館側は、藤棚への襲撃を予測していたのではないかと思います。撮影の角度が良すぎるので。
杜撰すぎる"犯人"
しかしこの犯人たち、防犯カメラを意識していないからなのか、自らの行為の正当性に余程自信があるからなのか、行為が余りに杜撰です。白昼堂々と、関電と大きく書かれた独特のカラーの車でやって来ることは、犯人特定を無茶苦茶容易にすることになります。もし真犯人が関電の社外にいて関電に罪をなすりつけようという意図にしても、赤くて天井が白いボディのあの型の車をワザワザ用意したり、関電から盗んで来るのはコストが高すぎます。しかも2台用意している。確かに関電に罪をなすりつけるのであれば、1台ではなく2台の車で乗りつけたほうが信憑性は増します。しかし偽装コストはさらに上がります。このような偽装は考えづらいので、仮に関電が認めていなくとも、状況的には関電がやったと考えざるを得ません。まあ、認めちゃっていますからその懸念はありません。
正当行為と考えている可能性
普通は考えにくいのですが、今回に限っては有りそうなのは、藤を切った犯人は、その行為を正当行為と考えている可能性があります。2台で来て、1台が立ち去った後に切断するというのは、明らかに立ち去った車に切断を判断する権限がある者が乗っていたということ。この者が、切断の最終決定を下したから、実行者は切断したと考えることができる。つまり、これは正当な業務行為の体裁を取っている(ように見えます)。正当な業務だからこそ、2台で乗りつけ、上司が確認し、緊急性もしくは正当性を認めて切断にGOを出したと。そうなると、常識的に考えて組織に色々問題があることになります。「再発防止に取り組みたい」とかいう緊張感のないコメントを言っている状況ではないかもしれません。
元々モメていた可能性
しかし、ニュースからは分からないのが、何で急に木を切ることにしたのかという唐突感です。当事者の間では、実は唐突でも何でもなくて、元々モメていたという可能性。これはあり得ます。関電は、停電の危険があるから藤の木のツタをなんとかしてくれと再三求めていたにも関わらず、旅館側が全く対処しなかったため実力行使に出たと。旅館の社長は、「(藤の木を切る際)事前に連絡もありませんでしたし」と言っているが、このカッコが曲者で、藤の木を切るまさにその時には連絡がなかったが、これまで再三警告を受け、近いうちに実力行使するという連絡を受けていたか否かは、ここからは伺えない。そもそも良い仕事をした防犯カメラがなぜ設置されていたのか、関電の実力行使を予測していたからではないかということも考えられる。
ニュースから分からないこと
結局、情報が少なすぎて、このニュースからはどちらがどうということはよく分からない。もちろん自力救済は大抵の場合認められないであろうが、停電発生可能性という公共性も考慮すべき事項ではある。特に台風15号で千葉県に大きな停電被害が広がる中で報道されたこのニュース。テレビ局にとっては美味しい餌であった可能性は高い。故にテレビ局の都合でセンセーショナルに報道されているだけなのかもしれず、実態は単純に割り切れず、色々な事実が存在した上での事件である可能性がある。