北の富士氏のコラムの的外れ感…
記事
的外れコメント
敗れた御嶽海について、次のように書いている。
3日目の一番で右まぶたを切ったハンディは気の毒だが、このくらいの傷に負けないでもらいたい。気力だ、気力。それしかない。ボクシングの井上尚弥選手を見習うことだ。
非常に筋が悪い。
状況の整理
人気便乗
これはもちろん井上尚弥選手の人気に便乗している発言である。井上尚は本当に強い。だから引き合いに出すことは、便乗にはなるが、まあ、良い。
共通点
井上尚弥選手と御嶽海の共通点は、格闘技のプロであり、最近の試合で目の上を切ったことである。
相違点
大相撲は相撲道であり、道の概念の上に成り立つ。一方、ボクシングは、スポーツであり、ルールの上に成り立つ。この相違点を意識せずに、相撲とボクシングを並べて語ると時としておかしなことになる。
着眼点の悪さ
やはり、「気力だ、気力。それしかない。ボクシングの井上尚弥選手を見習うことだ」の文が良くない。
ボクシングの井上尚弥選手は、気力で勝っているわけではない。気力も持ち合わせているであろうが、試合において「気力しかない」段階に至らないからこそ、強く、常勝しているのである。御嶽海は、負けており、また、「気力しかない」状況に陥っているから激励しているのだから、気力を出すまでもなく勝っている井上尚弥選手に、似た箇所を怪我しているからといって「見習うことだ」と言い放つのは、的外れで、どうなの?ということになる。まあ、この論理が成り立つのであれば、大相撲入門者全員に、「白鵬を見習うことだ」と言っていれば良いのだから、アドバイスは楽である。
コラムゆえの相反性
これがテレビでの発言等であれば、つい口から出た言葉ということで済ませられるが、コラムは文になっているから。推敲できる。仮にゴーストライターがいたとしたら、そこまでちゃんと見てやりなよという…ただし、逆に、チャッカリしているから、このようなコラムになっているという見方もできる。次のような理屈の上に成り立つと考えるのである。
敢えて逆張り
このコメントは、御嶽海本人に直接言ったことではなく、中日スポーツに綴ったコラムである。要は、読者向けコメントであり、御嶽海本人に向けたアドバイスではない。つまり、このような内容を求める読者向けリップサービスであり、北の富士氏自身が本当に思っていることとは限らない。ここが重要で、気力重視を歓迎する層が大相撲ファンに多いという戦略上の理由があり得る。
どこを見ているのかで大相撲の進み方が決まる
「気力」を重視する大相撲ファンとは、どのような層なのか。この層により大相撲の未来が影響を受けているのは間違いない。