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いきなりステーキ社長貼り紙はプラス効果を生んでいる


いきなりステーキの社長自筆の貼り紙が自画自賛と上から目線ということで、物議を醸しており、宣伝としては失敗と受け取られているとの論調を見かけるが、貼り紙戦略は、十分成功していると考えることもできるので、以下に見ていく。

記事

物議を醸したという記事の例。

誰に向けたメッセージなのか

今回のいきなりステーキのお願い貼り紙を、広く一般の消費者向けのメッセージと考えれば、上に挙げた記事の考えも理解できる。そのように考えれば物議を醸したという表現になることもわかる。しかし、この貼り紙が相手にしているのは、広く一般の消費者なのだろうか。

ターゲットマーケティング

この社長直筆メッセージポスターの「ターゲットとする対象は誰なのか」を考えないと、社長のもしくは、いきなりステーキ側の意図を誤る可能性がある。例えば、超高級スポーツカーの販売広告戦略において、購入可能な資産を持つ者に絞るのではなく、一般消費者の興味や好印象を得る必要があるのかということである。

いきなりステーキのこれまでの戦略

いきなりステーキは、これまで、肉マイレージカード及びそれに付随したランキングという手法でファンというか、リピーターを増やし、そのリピーターの来店頻度を増やすことに注力してきた。「1回行ったけれど安いと思えないからもう行かない」「1回行ったけれど値段の割に美味しくない」というリピーターとなりえない層は、いきなりステーキのメインターゲットではないのである。肉マイレージにより客への対応を明確に区別するという姿勢からは、リピーターになりえない客を追いかける気は、あまりないのである。全てのお客様にではなく、よく来てくれてお金を落としてくれるお客様に、今以上に来て欲しいのである。新規顧客の掘り起こしはしたいであろうが、それは1回来ればそれで良いという客ではなく、新たにリピーターになってくれる顧客を掘り起こしたいのである。

この貼り紙のターゲット

肉マイレージとランキングに魅せられ、何度でも通うリピーターに既になっている客が第一のターゲットで、今後リピーターになり得る層が第二のターゲットなのである。このため、物議を醸すという事態を引き起こしている人達が、そもそも「1回行ったが、もう行かない」や「最初から行く気がない」という層の人達のみであれば、いきなりステーキ側としては、物議を醸しても全く問題ない可能性が高いし、そういった騒動で話題になることが、逆にリピーター層にプラスの効果を生む可能性もあり得る。この、第一のターゲットが既にリピーターとなっている客で、その次が今後リピーターになり得る層であることは、この貼り紙の中からも分かる。「はじめてのご来店のお客様へ」のメッセージは、貼り紙全体の最後にあり、記載をした紙も、それまでのメッセージが書かれたものと比べかなり小さい。まずは、初めてではないリピーターに対してメッセージを送っているのである。そして、1回来たが見限った客に再訪をお願いしていると取れるメッセージは、椅子があるということと、150グラムからでも食べられるといった、以前と比べて変わった点を提示しているもののみである。これはリピーターならば分かっていることであるので、見限った客用と理解できる。しかし、これで見限った客がじゃあまた行くかと戻ってくるとも思えない内容ではある。このため、この貼り紙は、全体的にみれば、既存リピーター層に届けたいメッセージなのは明らかなのである。

「お近くの店を閉めることになります」は上から目線なのか

リピーター層に対するメッセージとして考えれば、来ていただけないならば、お近くの店を閉めることにもなりかねないよというのは、上から目線でもなんでもなく、その逆で、これまで店舗が少なかった時は、せっかく遠くから来ていただいても待たせることも多かったので、多店舗展開し、来店に要する時間も待ち時間も減らすように努力した。しかし、今以上にリピートしてくれなければ、元に戻すしかないよというだけの話である。これは上から目線でもなんでもなくて、来店時間と待ち時間を減らすというサービス向上策が経営的負担になるならば元に戻すしかないと言っているだけの話である。

結論

いきなりステーキがリピーターに支えられるビジネスモデルの上に成り立っているという前提に立てば、今回の物議を醸したという事態は、広く一般に向けたメッセージとしてではなく、リピーターに向けたメッセージなのだという観点で見るべきであり、そうであれば、いきなりステーキにとって、読み通りのプラスの宣伝効果を得た可能性もあるのである。
実際は、無謀な出店計画によりビジネスモデルが破綻したというだけなのかもしれないが、それを逆手に取って、サービス向上に努めるために出店を増やしたが、経営に負担がかかるようになったので、サービスレベルを下がるのではなく、元に戻さざるを得なくなりつつあるとリピーターに訴える形になっている。あくまでサービスレベルを戻すというスタンスである。今後、閉店を加速するかもしれないが、それはあくまで元に戻すだけであり、サービスレベルの低下ではないと言っているのである。そういう意味で、この貼り紙戦略は、よく考えられているといえる。