AI スマホに指当たる音で文字推測可能になるかもしれないという研究。タップ音から何を入力したかを推測するということで、なかなか面白いが、この研究発表では、最初の一歩というニュアンスである。だからこそ、NHKの記事も「対策必要か」という言葉を添えている。
記事
発表した学会
この学会というのは「SCIS2020暗号と情報セキュリティシンポジウム」で、発表題目は「スマートフォンのタップ音からの入力内容推測可能性に関する研究」。
研究者
記事では、
静岡大学の西垣正勝教授らのグループが28日、高知市で開かれた学会で発表しました。
と書かれている。シンポジウムの概要では、
◎大内結雲(静岡大学情報学部情報科学科)、奥寺瞭介(静岡大学情報学部情報科学科)、塩見裕哉(静岡大学大学院総合科学技術研究科)、上原航汰(静岡大学大学院総合科学技術研究科)、杉本彩歌(静岡大学大学院総合科学技術研究科)、大木哲史(静岡大学大学院総合科学技術研究科)、西垣正勝(静岡大学創造科学技術大学院)
となっているので、ファーストオーサーは、大内氏でラストオーサーが西垣氏となっている。西垣氏の指導のもと、大内氏が主となって研究したということだろう。
先行研究
概要によると、先行研究があり、内臓マイクによる盗聴の精度について研究されている。しかし、内臓マイクで拾った音を盗むことができるのであれば、そもそもスマートフォンに侵入できていることになり、何も音を分析せずともキー入力情報を直接取得できるので妥当性を欠く攻撃シナリオとしている。そこで、この論文では、外部から音を拾う点が異なるとしている。なるほど。ただし、現実の環境において、タップ音を他の雑音と区別して拾えるのだろうか。先行研究と本質的なところでは似たようなものの気もする。
AIの得意分野
こういうところにも、というより、こういうところにこそAIなのだろう。人の行為(タップする行為)であるが、行為の結果(今回の研究では、どの文字が入力されたか)がデジタルで出てくるタイプのものには、AIは、大きな効果をもたらす得意分野である。
これからの分野とも終わった分野とも言える
本研究は、対象を数字のみとしている。文字入力の場合、文字数の多さやフリック入力の考慮等、数字ほど単純ではないので、今後の研究によるであろう。本発表の概要にも「今回は,本研究の第一歩として」とあり、これからの研究により、現実の盗聴可能性が明らかになるのであろう。面白そうな分野ではあるが、学術研究としては、本質的なことは既に終わっているような気もする。これからは、学術的興味による研究というより、実用化?に向けた、産業的興味による研究分野になるような気もする。