時々のこと

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朝日新聞「任天堂、個人情報16万件が流出」の悪意のミスリード


任天堂が、ニンテンドーアカウントへの不正ログインを公表した。これは不正入手したログインIDとパスワードを入手したニンテンドーネットワークID経由でのログインだという。このニンテンドーアカウントの不正入手は、利用者側の落ち度である可能性が高く、ある意味で任天堂側の落ち度ではないと言える。このため、誰が悪いと言うのは、微妙である。ネット上での本件に関する記事は、この辺りを踏まえているが、朝日新聞は、ちょっと任天堂の責任に重きを置きすぎた感じのタイトルになってしまっている。なってしまってと言うより、意図的にそうなるようなタイトルにしている可能性が高い。そうすれば、キャッチーな見出しになる。

朝日新聞記事

このタイトル、任天堂のリスク管理が悪かったため個人情報を流出させたような印象を受けるタイトルである。

任天堂の報告とお願い

実際は、ニンテンドーの報告とお願いにあるように、任天堂が流出させたと言うより、任天堂以外の者が流出させたログインIDとパスワードを用いた不正ログインの事案である。

何らかの手段で弊社サービス以外から不正に入手したログインIDとパスワード情報を用いて、

というのは、要はお客様のログインID管理が適切でなかったということである。他社サービスで使用するID、パスワードと同じID、パスワードを用いていた為、他社サービスから漏れたIDパスワードを用いて不正ログイン被害にあったということである。IDとパスワードが分かれば、お客様本人でなくてもログインできてしまうのだから、不正ログインされないため、ID・パスワードの厳格な管理責任は、お客様側も任天堂側にもある。このため、一番責任を負うべき者は、漏洩させた他社サービスかIDとパスワードを使いまわしていたお客様である。次の読売新聞の記事タイトルは、これを踏まえ、不正ログインを前面に出したものとなっている。

読売新聞記事

読売新聞の記事タイトルは、次の通り。

任天堂の「ネットワークID」に不正にログイン、全世界で16万件の被害

ここでは、任天堂が流出させたというよりトーンは見られない。

朝日新聞タイトルの巧妙さ

朝日新聞の難関記事のタイトルをもう一度見直してみる。

任天堂、個人情報16万件が流出 不正ログインで購入も

これ、頭の中で、「任天堂が個人情報16万件を流出」と読んでしまいがちなことを計算したタイトルであり、そこに朝日新聞のタイトル付けの巧妙さが見て取れる。実際は、「任天堂(の保有する)、個人情報16万件が、(不正ログインで)流出」等とするべきタイトルであるが、言葉の並べ方と省略を巧妙に行うことで、任天堂の責任が必要以上に強く出るようなタイトルとなっている。

主語をずらす手口

巧妙なミスリードは、つまり、見出しを見た者が、記事本文を読みたくなるようなキャッチーなタイトルをつける為に、行われている。

「任天堂が個人情報16万件を流出 不正ログインで購入も」の方が、読売新聞の『任天堂の「ネットワークID」に不正にログイン、全世界で16万件の被害』より、任天堂がしでかした感が強いから。

しかし、実際の朝日新聞のタイトルは、「任天堂、個人情報16万件が流出 不正ログインで購入も」とミスリードを見越したタイトルになっている。

「任天堂が個人情報16万件を流出」と「任天堂、個人情報16万件が流出」の違いは既述だが、このミスリードは悪質である。

任天堂の落ち度

では、任天堂に落ち度はなかったか。今回のケースは、1組のID・パスワードによる認証で、複数サービスにログインできてしまうシングルサインオンという方式となっていた。これは、1度の認証だけで良いので利便性が高いが、1度パスワードを破れば、その後は自由になりすますことができるという点で、セキュリティリスク管理上は最適とは言えない。このリスクを低減するために、二要素認証と呼ばれる、ID・パスワード以外認証方法と組み合わせた方式が提唱されている。特に金融機関のWEBサービスの場合、金銭のやり取りが関与するので、これを用いることが多い。今回問題になった任天堂のサービスでも、ゲーム等の購入被害があったため、金銭的なやり取りが発生しているので、二要素認証を取るべきだったとも言える。しかし、二要素認証は、圧倒的にログインの際の手間が増え、不便である。利便性とリスクを秤にかけることになる。ここからは、リスクをどの程度管理するかの任天堂の判断の領域なので、一概に二要素認証を採用していないから任天堂の落ち度とは言い切れない。

朝日新聞は東スポになりたいのか?

朝日新聞のタイトルは、意図的なミスリードを誘う文言の選択を、意図的にしていることが、悪質であると言える。そのためによく考えるとおかしな語の並び順となっている。そうまでしてミスリードを誘わなくとも、読売新聞のタイトルのように表現すれば良い。これでは、見出しが命の東スポと同じになってしまう。朝日新聞と東スポでは、新聞のジャンルが異なるので、朝日新聞が東スポの位置付けになるというのであればともかく、そうなないのならば、このようなタイトルはやめるべきである。