木村花さんの死去を受けて、SNSの事業者団体が、他人への嫌がらせや名誉毀損を意図した投稿をした利用者に利用停止などの措置を取るとの緊急声明を発表した。
緊急声明文
記事
利用停止などの措置
登録の本人確認の厳格さ程度から考えて、利用停止と言っても、そのIDを使えなくすることがせいぜいということだろう。別IDは容易に手に入れられるなら、捨てアカでの嫌がらせをすれば結局変わることがない。どちらかというと、「などの」に当たる、「被害者から投稿者を特定する情報の開示を求められた場合、法令に基づき適切な範囲で情報提供する」ことの明記がポイントであろう。匿名性は、そこまで高くないぞということを明示することで牽制したということ。しかし、この程度しか対策できないのはもどかしい。声明に「利用者の表現の自由や通信の秘密の保護等を最大限尊重しつつ」とあるように、表現の自由や通信の秘密とのバランスも必要となるから。この問題は、別に木村花さんの死去に伴って生まれたものではなく、これまでもずっとあった問題であり、残念ながら緊急声明を出したからと言って、問題が明確化されたり、画期的な対応策が生まれたりといった、一朝一夕に解決に向かうものでもない。衝撃的な事件が起きたから緊急声明したというだけのことである。
SNSの事業者団体?
これ、なぜだか記事では明示されていない。
こちらの記事には書かれている
この業界団体の名称はNHKの記事には書かれている。「一般社団法人ソーシャルメディア利用環境整備機構」という先月設立された組織らしい。なぜ共同通信の記事では書かれていないのかは謎ではあるが、理由はあるのだろう。
実態がまだ見えない団体
一般社団法人となっているが、SNSというインターネット界の事業者であるにもかかわらず、この「ソーシャルメディア利用環境整備機構」は、ウェブページを持たない。先に挙げた声明文も、その母体である「一般財団法人 情報法制研究所」(JILIS)のウェブページ内にある。これはちょっと違和感である。
しかもそのディレクトリは、
https://www.jilis.org/seishonen/pressrelease_20200526.pdf
となっており、「青少年」のカテゴリとして掲載されている。何かちょっと違う。本当に出来立てホヤホヤの組織が、急に大きなものに直面したということだろう。しかし、SNSの業界団体なのでもう少し頑張らないと、ちょっと信用度が足りないイメージになる。このホームページを持たないということが、共同通信の記事において団体名が明記されていなかった理由だろう。自前のページのないSNSの業界団体ってそもそも…という方である。
緊急声明の限界
この声明は、結局、設立1ヶ月の事業者団体が、SNSが遠因となった死亡事件に対し、事業者団体としてどのような再発防止策を取っていくかの姿勢を見せたというのみで、具体的にはまだあまり詰まっていないものである。それでも、やはり木村花さんの事件は、業界にとって衝撃的だったということだ。事業者として危機を覚え、速やかに手を打ったということだ。