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マルグリット・ユルスナールと光源氏と三島由紀夫


日本での知名度は高いとは言えないフランスの女流作家マルグリット・ユルスナール(Marguerite Yourcenar)であるが、1936年に源氏物語に材をとった小説「源氏の君の最後の恋(Le Dernier Amour du prince Genghi )」、1981年に三島由紀夫に関するエッセイ「三島あるいは空虚のビジョン(Mishima ou la vision du vide)」を著すなど日本文学にも造詣が深い。ただしこれは、ユルスナールが、日本文学に対してだけ特別に造詣が深かったというものではなく、東洋文学を含む広く文学というものに対する関心、教養の深さから来るものである。このため、中国、インドに材をとった短編もある。

ユルスナールの作品には死の影が付きまとうものが多く、「源氏の君の最後の恋」も晩年の光源氏が死の前の最後の恋についての物語であるし、「三島あるいは空虚のビジョン」はそのまま三島の自殺を題材にしている。
「源氏物語」が古典の名作として誰もが知る作品であるため、光源氏の最晩年を小説として描くというアイデア自体、日本では畏れ多くて考えられないものであるし、三島由紀夫についての評論は、三島の妻にインタビューした上で書かれている等、ユルスナールは文学界におけるチャレンジャーであった。米国の大学で文学に関する教鞭もとっており、文学的興味の塊の人だったと言える。