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バンクシーの米国黒人男性死亡事件デモに関する作品の解釈


バンクシーの燃える星条旗の作品。相変わらずシンプルな表現ではあるが、変な小物もあってストレートな解釈はできないようにも思える。どのような意味を持つのか考えてみる。

CNNの記事

CNNの記事では、燃える星条旗は次のように解釈されている。

星条旗が燃える様子を描いた作品からは、有色人種の人々は制度のせいで失敗に追いやられているとのメッセージが伝わってくる。

もちろんこのような解釈も可能なのであろうが、少なくとも日本人には、星条旗が一部燃えていることをもって、このように理解することは難しい。

ロウソクの火は虐げられてきた有色人種の抗議の感情か?

犠牲者の遺影に添えられたロウソクの火が星条旗の一隅を燃やすその炎が、今まさに始まっている差別反対の人々の活動と考えることも可能である。ただし、この炎は、星条旗を燃やすものである。そうなると、この炎は星条旗が象徴するアメリカ自身を亡きものにしてしまうという意味となるのであろうか。ただし、これは現在のアメリカを象徴するものであり、今の星条旗が象徴するアメリカは、白人中心のアメリカという解釈をすれば、この星条旗を燃え尽くした先に新しい星条旗、新しいアメリカがあると考えることもできる。

燃え尽きた5本のロウソクの意味

この作品は少し妙なストーリーが隠されている。右にある今燃えているロウソク以外に、遺影の前に既に燃え尽きたと思われるロウソクが5本描かれている。特にその中で一番右のものは、他の4本と比べロウの残量が長くまだ火を灯せると思われる。これらの火が点いていないロウソクの意味が問題になる。これは、過去、何度もこのような問題が発生し、抗議の行動は繰り返されていたが、アメリカ国旗に火を点けるところまでは至らなかった。しかし、今回においては、ついにアメリカの体制の本質見直しに迫るきっかけになったと考えることができる。そう考えると、燃え尽きた複数のロウソクは、これまでの類似の事件を指すのであろう。そしてそれら事件に対するアメリカ国民の問題意識は、個別事件で異なっていた。それをロウソクの残量が表していると考えることができる。そうなると遺影の人物は1人ではないことになる。一番左奥のロウソクは、残量は少し他よりあるが、芯がなくなっている。このように複数のロウソクに表現の差がある理由を考えると、個々のロウソクを、アメリカにおける人種差別の実際の個別事件に当てはめることができると考えられるが、残念ながらその知識がないので、そこまでは言及できない。

枯れた花の意味

遺影の左側に枯れた花がある。これは、上に述べた燃え尽きたロウソクと対応するものであろう。やはりロウソクと花がセットで、過去にもあった事例もしくは繰り返されるデモを暗示しているといえる。

今まさに引火した状態の意味

この作品。星条旗の火は、今まさに点いたという状態である。旗であるので、この後、一瞬のうちに燃え尽きるであろう。つまり、この絵は、時代のほんの一瞬のタイミングを切り取ったものであり、この作品が公開された時点でも事態は既に変わっており、時間が進むにつれ更に変わっている。そのような抗議活動が立ち止まらず進んでいくことを、この火は表しているとと解釈できる。

アメリカはまた元に戻るのか?先に進めるのか?

過去の事件を表すであろう燃え尽きたロウソク。今回のジョージ・フロイド氏の事件もまた過去の事件と同じように燃え尽きて、アメリカの体制を変えるには至らないことになるのか。もしくは今回は、これまでより先に進めるのか。そのような時間の流れの中の一瞬をこの作品は切り取ることで、未来を描いていると言える。

この作品の評価は時代とともに

1年後、10年後にこの作品を振り返った時、我々はアメリカの有色人種差別の実態につき再度考えさせられることになる。2020年にアメリカに対して点けられた火は、その後、どのような経緯を辿ったのかと。そして、このバンクシーの作品の評価は、このアメリカの差別問題の取り組みの深化とともに変わっていくのだろう。まさに現代アートである。