時々のこと

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感染の4割が30代以下の統計マジック


マジックというほどでもない。これ、典型的数字の詐欺の一種。マジックがあるとすれば、記事の見出しの書き方がひどい。
以下に見ていく。

ベース資料

検証事項

「新型コロナ 感染確認の4割が30代以下」

この事実を根拠に、記事では、「特に若い世代には感染を広げないために慎重な行動をとるよう呼びかけています。」と言うのだが、この事実は、呼びかけの根拠になるのだろうか。

検証

検証と言っても簡単なことで、人口推計の年代別人口から、39歳以下の全人口の割合を見て、記事が言う感染確認4割が多いか否かを評価すれば良い。
東京都の年齢別人口推計が無いので、総務省統計局の日本の人口推計(人口推計2020年3月報)を代用する。これによると、39歳以下の人口は、全体の約4割と分かる。これと感染者の割合を比べてその大小を比較すれば、と言うまでもなく、両者とも割合は同じ約4割。つまり、若者の感染者は、人口比通りであり、若者に限って呼びかけることはナンセンスということが分かる。4割というと多いように見えるため、この記事はキャッチーに見えるが、人口比通りであり、何ら若者の感染が突出していると言ったことでは無い。このミスリードは、意図してやっていれば酷い記事であるし、無知から来るのであれば、外に出す前に誰か気づけよというものである。

グラフの切り口

10歳未満、10代、20代、30代と来て、次は40代以上のみ。この切り口に恣意はないのだろうか。ちゃんと、40代以降も10歳刻みで表現しないと。また、実数のみではなく、せめて人口対比でのデータも併記すべき。このあたりをすっ飛ばしているNHKのデータ担当者。今時のデータサイエンティストなのだろう。

都および都知事の発言

少なくともNHKによるミスリーディング記事であることが分かったが、では、都としてはどのように言っているのかを下に見ていく。上記記事から、都、および都知事の発言を抜粋する。

都その1

氷山の一角の可能性がある

記事では、その後「特に若い世代には感染を広げないために慎重な行動をとるよう呼びかけています。」と続くので、若者に対するコメントに取られてしまうかもしれないが、このコメントだけでは世代の区別は見られない。

都その2

若い人で感染がわかったのは、まだ氷山の一角の可能性がある。早めに見つけて重症化しやすい高齢者にうつさないことが大切だ

都その1の内容を、再度詳しく書いていると思われる。ここで氷山の一角が、若い人の感染者を指していることが分かる。

東京都小池都知事その1

最近はスポーツ選手など、若くて元気な皆さんが感染していて、『まさか、僕が』ということでいろいろ発信されている。若いから、元気だから、何も問題ないから、というのではなく、『ひょっとして』と感じていただきたい

ここでは割合は分からない。単に若い人へメッセージを送っているだけで、若い人の感染が多いか否かは語っていない。

東京都小池都都知事その2

この時期は入社という節目でもあり、歓迎会などがあるかもしれない。そこは本当に申し訳ないが、夜の外出は控えていただきたい

こちらは、さらに年代を問わなくなっている。入社というキーワードが一般に若い人を指すとは言えるが、歓迎会自体は、若くなくとも参加する。

都も都知事も「新型コロナ 感染確認の4割が30代以下」とは言っていない

この記事のタイトルは、

新型コロナ 感染確認の4割が30代以下 都「慎重な行動を」

である。これは、都が、「新型コロナ 感染確認の4割が30代以下」と取る人もいるはず。しかしこれ、記事を読むと、そうではないと分かる。

NHKが先月25日から1日までに感染が確認された416人全員の年代を詳しく調べたところ最も多かったのは30代で89人でした。

記事では、上のように書いている。繰り返しになるが、これは、NHKの解釈なのである。つまり、この初歩的な統計の誤用というかミスリーディングは、都ではなく、NHKが行なっていることである。