強盗犯が店員をメッタ打ちしている場面に出くわしたため、容疑者を倒した上で、取り押さえた高校生3人組に北海道警函館中央署が感謝状を送ったという記事。これ、店員も救っているが、容疑者も救っている。
記事
状況
男性容疑者と男性店員がもめている場面に遭遇。容疑者が警棒で男性店員を殴り始めた時、吉川さんが背後に回って容疑者を倒し、3人で押さえ付けた。
単にもめているだけでは別に他人が関わることはないから、「殴り始めた時」が引き金になって取り押さえたのは妥当。
ここで1人の高校生が、
店員さんの命に関わると思ったら(体が)飛び出していた
と言っている点がポイント。命に関わるという状況は、緊急逮捕が認められる。3人の行為が主観的にも客観的にも正当化できる。
容疑者の救済
そして容疑者にとって最も重要なのが、次の文。
上野泰広署長は「3人がいなければ犯人(容疑者)は店員にけがをさせて逃走していた。正義感のある勇気ある行動に感謝します」とたたえた。
「店員に怪我をさせて」が重要。
罪と罰
強盗罪と強盗致傷罪の罪と罰を以下に見てみる。
強盗罪(236条)
暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。
前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
強盗傷人罪・強盗致死罪(240条)
強盗が、人を負傷させたときは無期又は六年以上の懲役に処し、死亡させたときは死刑又は無期懲役に処する。
刑の比較
単なる強盗罪なら、五年以上の有期懲役。しかし、怪我をさせたとなると、無期又は六年以上の懲役にアップする。商業施設とあるから、防犯カメラに顔や姿は撮られているはずで、いずれ捕まっただろうし、もめていたところがエスカレートして暴行に及んだのだろうから、確かにこのままだと、流れからして傷害に及んだ上で逮捕された可能性はある。そもそももめていただけで、そのまま逃走すれば窃盗罪でさらに軽かったものを…まあ、故意の犯罪などそもそも犯すべきではないが。
署長の話
署長が、「3人がいなければ犯人(容疑者)は店員にけがをさせて逃走していた」と言っているのは、そうなったら容疑者は罪を重ねることになったが、3人はそれを防いだと容疑者の側に立って語っているとも言えるのである。
犯人と容疑者
刑が確定していないので、新聞では「容疑者」という言葉を使っているが、この署長は、断定的に「犯人」と言ってしまっている。そらは記者が忖度すれば良いのに律儀に「犯人(容疑者)」と書いており、意味がわからない状態になっている。まあ、署長大丈夫か?と記者は突っ込んでおいたということか。