見出しだけ見るととんでもないことなのですが、よく読むと、まあ納得はできないですが、理解はできる判決です。しかしこの妻のやったことは衝撃的な行為には違いありません。
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“夫に無断で冷凍保存の受精卵移植”親子関係認める判決確定
NHK NEWS WEB, 2019年6月7日
判決の概要
凍結保存していた夫婦の受精卵を妻が別居中の夫に無断で移植して出産し、夫だった男性が子どもとは法律上の親子関係がないと訴えた裁判で、最高裁判所は男性の上告を退ける決定をし、親子関係を認めた判決が確定しました。
最高裁の判決です。男性は最高裁まで争ったということですね。それはそうですね、いくら遺伝子上は自分の子といっても、離婚した元妻の子に法律上の義務が色々発生するわけですから、その衝撃は大きいはず…と思いきや、記事を読むとあちこちキーワードがあって謎に包まれます。
妻の衝撃的行為
別居中の夫の受精卵を移植するというのは、どういう考えによるものだったのだろう。この辺り全く書いていないので、想像もつかない。
夫の覚えた恐怖
別居中の妻が妊娠したことをいつ知ったのでしょう。また、それが自分の子と知ったのは同じタイミングだったのでしょうか、違ったのでしょうか。この辺り全く書かれていないのですが、裁判では明らかになっているはずです。
謎なポイント
記事にははっきりと書かれていないので分からないのですが、複数の謎な点があります。
別居の原因
別居した原因がどちらにあったのか、どのような理由だったのかで、かなり心証が変わります。
離婚の時期
はっきりとは書かれていません。しかし、
離婚したあとに訴えました。
という書き方からは、離婚は夫が妊娠を知った後ととらえることができます。ただし、出産後か否かまでは書かれていません。しかし、なんとなく出産後もしばらく離婚していなかったような書き方です。出産して赤ちゃんが生まれなければ訴えることはできないですし、離婚が生まれたのであれば、「離婚したあとに訴えました」ではなく、「離婚したあとに子供が生まれたので訴えました」というような感じになるはずです。
移植に対する夫の同意
そもそも夫婦双方の同意なしに移植して良いのでしょうか。医者はその確認なしで移植したのでしょうか。これについて、記事では、
受精卵の移植に夫の同意が必要かについては判断しませんでした。
と書かれています。ここは最高裁が頑張って判断して欲しかったところですね。
パズルのような記事
この記事は、上に書いた謎なポイントのように、言外の意味というか情報を、非常に分かりづらく埋め込んでいます。他にも次のようなものがあります。
第二子についての争い
凍結保存されていた受精卵を無断で移植して出産した2人目の子どもについて
さらっと流すと一人っ子のように読んでしまいそうですが、上の子がいるのです。こちらの子は夫も自分の子と認めているのですね。今回争っているのは第二子だったのです。
夫婦の実態がある別居
大阪高裁は、別居していても夫婦の実態が失われていなかったとしたとのことですが、これはどういうことなのでしょう。この夫婦には何か特別な事情のあったのでしょう。別居期間がかなり長く続いたあとに離婚となった印象です。