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【香港デモ】"高校生に発砲"について考えるべきこと


香港のデモ隊と警官が衝突し、警官がデモに参加した高校生の左胸を撃った件。これを社会運動家周庭氏が非難しているのだが…

 

記事

 周庭氏のツイート

発砲直後に香港の社会運動家周庭氏が日本語でツイートしています。

これ、添付された動画では確かに警官は胸に向けています。威嚇ともとれます。着目すべき点は、撃たれた高校生は、発砲の直前、警官の銃を持つ左腕に鉄パイプを振り下ろしています。そして、殴打のタイミングで発砲された感じです。デモ隊側の周庭氏の動画でも"発砲前に警官の腕を高校生は鉄パイプで殴った"ことは分かります。

このシーンの前後も記録あり

周庭氏の添付した動画ではこれくらいしか情報はありませんが、他のアングルでのいくつかの動画がtwitter、youtube他に上げられており、それを見ると、この発砲に至るまでと、発砲後のことがわかります。

このシーンの前

発砲したのとは別の警官が、デモ隊から逃げているのですが、途中で転んでしまいます。そこをデモ隊の数人が襲います。鉄パイプで殴打します。撃たれた高校生もその中にいます。そこに警官が駆け寄ります。これが銃を撃った警官です。この警官が近づく頃、高校生が立ち上がります。警官と高校生は顔を合わせることになり、警官は高校生に銃を向けます。以降は周庭氏の動画のシーンとなります。

このシーンの後

撃たれた高校生は崩れ落ちるのではなく転ぶように倒れます。これは、足下にそれまで殴打していた警官がいるため、足を取られたためです。発砲により、他のデモ隊も殴打をやめ、遠ざかります。殴打されていた警官は立ち上がり、発砲した警官らの方に逃げ、撃たれた高校生にはデモ隊らしき1人が近寄りますが、近寄った人間に、どの警官か分かりませんが、掴みに行きます。その直後、警官数人がいる辺りに火炎瓶が投げられます。

暴力の応酬

結局、周庭氏のツイートでは、"警官が高校生である若いデモ隊メンバーの胸を撃った"という衝撃的な内容が強調されていて、それ自体は事実であるが、その前後を考えれば、デモ隊の暴力は看過できるものだったのかという視点がある。確かに銃で撃つということは、殺傷能力の高さから非難されるが、倒れた1人の警官に集団で鉄パイプで殴打を繰り返すことが、それを救うための発砲と比べてどの程度非難されるべきことかは、考えるべきである。

警官を刺しに行くデモ隊メンバー

しかも、周庭氏が上げた動画をよく見ると分かるが、デモ隊の中には、警官を鉄パイプで打ち据えるのではなく、刺しに行っている者もいる。確かに警官はプロテクターを着用しているので打つより、プロテクターの隙を刺したほうが攻撃として有効である。しかし、この有効性というのは、致命傷を与えるレベルの話であり、これはもはや、殺人行為と言えよう。暴行ではなく、傷害もしくは殺人の故意が認められる。しかも火炎瓶まで投げ込んでいる。また、発砲も、高校生が鉄パイプで銃を持つ腕を殴打したことが契機ともとれ、高校生はとっさに銃口をかわすために取った行動の可能性はあるが、鉄パイプで腕を打つという行為は、殺意はないにせよ、明らかに傷害の故意はあるはずで、一概に警官だけを責めるわけにはいかない。

若い高校生を撃ったこと

これは、周庭氏が意図的に"18歳の高校生"と入れて、まだ未成年の子を撃つのかという印象を与えようとしているのだが、これは逆効果である。まだ未成年の子供を警官と対峙させ、警官を打ち据え、中には刺そうとするメンバーの中に組み込んでいるデモ隊の方が問題なのではなかろうか。少年兵が問題になっていることを恐らく周庭氏は、少なくともこのツイートをした時点ではイメージできていなかったのであろう。未成年の子は撃たれたことが悲劇の原因なのではなく、命がけの場に放り込まれたことが悲劇と捉えることができることに思い当たるべきである。

動画という目撃者

現在は、カメラが発達し、動画という目撃者がいるため、以前なら可能であった"やったもの勝ち"ということが難しくなった。これは、体制側も反体制側も束縛する。動画を都合の良いところだけ切り取るということも、難しくなっている。ただし、体制側と反体制側で入手できる動画の量に違いがあると、なかなかそうはいかないのかもしれないが。

周庭氏のまずさ

鉄パイプで集団で殴打することや火炎瓶を警官に投げつけることの異常性に言及していないどころか、動画の該当部分を切り取って自分の都合の良いところだけ提示する周庭氏のツイートは、他のソースがいくらでも手に入るケースにおいては通用し難いまずい手法である。周庭氏の言う、「あの警官は銃で足を狙うのではなく、心臓を標的にしました。殺人行為と同然です」は、撃たれた高校生と行動を共にしていた、倒れた警官を鉄パイプで刺しに行っているデモ隊の1人にも当然向けられるべき言葉であるし、撃たれた高校生も、刺すことはしないかったかもしれないが倒れた警官の滅多打ちに加わっている。まさに滅多打ちであり、足や腕に限定して打っているようにはとても見えない。これは、慎重に切り取ったはずの周庭氏自身があげた動画にさえ映っているシーンである。

全体と個別

政府とデモ隊の暴力的行為の正当性を見る時に、全体と個別の話がある。周庭氏の考えは、全体的にデモ隊に正当性があるから、個別の衝突についても、デモ隊が正しいという論理である。経緯から見て、全体的にデモ隊に正当性があるというのは、個人的には同意できる。しかし、警官も命ある人間であるので、個別の衝突において、身体、生命の危険から脱するための行為には正当性が生まれるはずである。警官を、集団で追いかけ回した上で、路上に倒し、鉄パイプで集団で滅多打ちにする行為が先行している以上、銃を撃った警官の行為を非難するだけでデモ隊側の事実に触れないというのは、無理がある。