「魅力的な女性を見つけてやってしまった」ことの代償が、強制わいせつ致傷と強盗の疑いで逮捕というのは、あまりに愚かである。医師というからには医学部に入学し、医師国家試験に合格しているのであるから、それなりの思考力はあるだろうに、法学知識がなかったか、理性が本能に勝ったのか…とにかく愚かなことをしたものである。
記事
罪と罰
強制わいせつ致傷と強盗それぞれの法定刑をみてみる。
強制わいせつ致傷
無期又は3年以上の懲役
強盗
5年以上の有期懲役
準強制わいせつ
6ヶ月以上10年以下の有期懲役
犯したのは重い罪
結局、法定刑を単純に組み合わせると、強制わいせつ致傷罪と強盗罪の悪いところが組み合わさって、無期または5年以上の懲役という過酷な結果になる。形式的には、犯したのはかなり重い罪である。ただし、まあ、犯罪目的が性的な欲求からが来たものであるため、致傷が強制わいせつ罪の方について、強盗致傷(無期又は6年以上の懲役)とならなかっただけマシであると考えるべきか。
法を知らないことは怖いこと
個々の犯罪の法定刑など普通の人は知らないものである。しかし、一度、何か悪事を犯してしまったなら、それは大抵既に類型化され、法定刑が定められており、それに基づき刑が課されるのである。記事の医師は、恐らく自分の犯した行為の代償となる法定刑が、これほど重いものであるという認識はなかったと思われる。その意味で、法を知らないことは怖いことである。
犯罪抑止効果を期待するための教育
刑罰は犯罪の抑止効果を期待するものである。犯すべきでない行為を順位づけして、刑罰を加減している。しかし、これを知らなければ抑止効果は期待できない。今回の医師は、自分の犯した罪状とその法定刑を知っていたら、このような行為に及ぶことを思いとどまったかもしれない。しかし、だからといって義務教育で刑法を細かく教えるかというと、それも違うように思える。刑の軽い犯罪なら犯して良いと考える人間を生むことにもなりえるのであるから。
類似例
「罪と罰の収支が全く合わない…手当目当ての消防団員放火」というエントリを2日前に書いているが、こちらも法定刑を知らないために安易に重大な犯罪を犯した例である。知らないことは、やはりそれ自体罪である。