「黒人」で「ホームレス」で「トランスジェンダー」で「HIV感染者」。マーシャ・P・ジョンソンは、この1つでも大変なハードモードを4つ相手に、今よりさらにハードモードのレベルが高かった40〜50年前に戦っていた活動家である。
- トランスジェンダーの活動家
- 1つでも社会的に抑圧されるものを4つ抱える
- 何者でもない人間が、知名度を得て発言していく
- ウォーホル作品のモデルにも
- 記念碑も予定されている
- 知名度を得ても経済的にも人生的にも救われない
- Google Doodleに選ばれた理由
トランスジェンダーの活動家
アフリカ系アメリカ人のトランスジェンダーの先駆的活動家。ミドルネームの"P"は、ジョンソンによると、"Pay It No Mind."(気にしない)の略で、これは、性別について聞かれる際の回答に由来するという。
英語では、Marsha P. Johnson。
1つでも社会的に抑圧されるものを4つ抱える
そのいずれか1つを持つだけでも、社会から差別的に扱われる可能性のあるものを4つ抱えながらも、ジョンソンは戦った。この栄誉を讃え、2019年のニューヨークプライドマーチ(LGBTQ+文化のためにNYで行われるイベント)にて、「Grand Marshal」の称号を追増されている。ただ、ジョンソンは、この戦いをなすにあたっては、自身がドラァグクイーンとして知名度を有しているからできたものだと知っていた。
何者でもない人間が、知名度を得て発言していく
ジョンソンは、インタビューで、“I was no one, nobody, from Nowheresville, until I became a drag queen.”(私は、ドラァグクイーンになるまで、名もなく何者でもない素性の知れない人間だった)と語っている。しかし、ドラァグクイーンとして知名度を得ると、様々な抑圧された人々に関する運動に加わった。このあたりアメリカらしいというイメージである。
ジョンソンは、エイズ撲滅運動にも加わるが、自らもHIVに感染したり、精神科にも通ったりと、肉体も精神も磨耗してしまいそうな生き様である。
ウォーホル作品のモデルにも
ジョンソンのドラァグクイーンとしての知名度は高く、アンディ・ウォーホル の「Ladies and Gentlemen」のモデルにもなっている。
記念碑も予定されている
ニューヨーク市は、ジョンソンと、同じくトランスジェンダー活動家のシルビア・リベラ(Sylvia Rivera)両者の記念碑を製作すると2019年に発表。2021年に完成予定となっている。
知名度を得ても経済的にも人生的にも救われない
ジョンソンの知名度が上がっても、それは生活水準の向上を意味せず、貧困のままであった。そしてその人生は、ニューヨークのハドソン川にしたいが浮かぶという形で終わった。警察により自殺と断定されたが、その死を事故または殺人と捉える説も多い。この時代は、LGBTの風当たりが強く、反LGBTの者による暴力事件は多かった。ジョンソンの場合、更に黒人であったこともあり、生きづらさは一層増したはずである。自殺だとしても浮かばれないのであり、彼女は戦いのシンボルとなって歴史に名を残してはいても、自身の人生はハードモードなまま終えたと言うべきであろう。
Google Doodleに選ばれた理由
2020年6月30日のGoogle Doodleの人に選ばれているが、これは、既述の「Grand Marshal」の称号の追増が、2019年の同日に行わたことに由来する。ただし、Google Doodleで、人物が採用される場合は、誕生日に因むことが多いが、今回のケースでは、前年の追増に因んである。ジョンソンの誕生日は、8月24日なので、そちらにすることも可能であったはずだが、恐らく、企画段階で、BLMの盛り上がりを考慮して、この黒人のトランスジェンダー活動家を、ニューヨークのプライドマーチに関連付けて選んだのだろうと考えられる。