見解の相違というのはこういうことという典型例。記事では、当事者双方と、第三者である大学教授がコメントしてる。その見解の食い違いっぷりが半端ない。どちらの見解がどうのではなく、日本語的に食い違いの面白さを味わっていきたい。
記事
決議側の主張
「議員になった以上、オンブズマン活動を行うのはいかがなものか」として、活動を続ける場合には議員を辞職するよう迫っている。
【決議内容】
もう1つ。
発言は議場ですればよい。庁舎の件などで行政を停滞させ、市が進めることを否定する姿勢はいかがなものか
【政新会高橋八重典代表】
決議側には「いかがなものか」が好きな人たちが多い。しかし、この言葉、結局はある見解を否定したくて使うのだけれども、形式は相手に見解を問うている言葉。結局、自分たちの主張に最終的に責任を取らない人が多用する言葉。「いかがなものかと問うただけで、見解を完全に否定するつもりはない」みたいな感じのニュアンス。今回の2つの主張で共にこれが使われていることは、まあ、そういうこと。
決議をされた側の主張
住民訴訟や市民の監査請求の萎縮につながりかねない。辞めるつもりはなく、闘っていく
【加藤議員】
主張がシンプルで言い切っており、迷いがない。いかがなものか論者とは全く違う。
第三者の大学教授の主張
議員活動で市政のチェックはできるが、それと別に社会活動としてオンブズマンをするのは全く問題がなく、むしろ二重のチェックができる。決議は「市政と違う考えはだめ」とのニュアンスだ。議会は多様な民意を反映し市政をチェックすることが本質。議会の本質をわきまえない恥ずかしい決議だ。
【名城大・昇秀樹教授(行政学)】
完全に学者は決議を否定している。
決議における「いかがなものか」に対する学者先生の答え
決議では「議員になった以上、オンブズマン活動を行うのはいかがなものか」として議員辞職を迫っているが、大学教授の見解は、この決議が、「議会の本質をわきまえない恥ずかしい決議だ。」とまで言っている。つまり、決議は、議員になった以上、と議員の矜持を元にして、辞職を求めているのに対し、そもそもそんなこと言うのは、議会の本質わかってない人間と自白しているんだけど、恥ずかしくないのか?と言っている。逆に言えば、議員の矜持を理由に議員辞職迫るならば、自身が全く議会の本質を分かっていないことについて、どう落とし前つけるのだ?と言外に言っている。
ボールは戻ってきた
記事で名前を出された政新会高橋八重典代表は、当てるためにボールを投げつけたつもりでいたのだろうが、横に立っていた打者の大学教授に打ち返されてしまった。ドッヂボールやろうとしたら野球だったみたいな状況で、急遽守らなければならなくなった、高橋代表は、これをどう処理するのだろう。決議なのだから、法的効力無くても残るよ。
記事のスタンス
記事のスタンスがそもそも決議に反対する側なので、第三者の大学教授もそう言う考えの人が選ばれたのだろうとは思う。ただし、記事を読む限り、論理的に決議がおかしいと言う流れに違和感はない。
おまけのトンデモ発言
採決前の質疑で加藤議員の活動内容などを質問した議員に対し、提案者の佐藤高清議員(5期)は「あなたとは考えが違う。あなたの質問に答える必要はない」と説明を避けた。
なんと、議会での採決に関わる質疑において、考えが違うから、質問に答える必要はないと言ってしまう議員までいるのか。思うに、この議会は、多分、意識は小学校低学年の学級会なのだろう。議会の趣旨と運営を説明する、せんせいが必要だな、この人たち。
追撃の記事
まあ、そうなるわな。名前出して議会の本質をわきまえない恥ずかしい決議の正当性を語った人は、次の議会で何かこれについて発言するのだろうか。それとも欠席するのか。
先の記事では大学教授の言葉なのでオブラートに包んであった(それでもかなり破れていた)が、こちらの記事は、別の市の議員の言葉として、「めちゃくちゃな決議で驚いた。私なら名誉毀損(きそん)で訴える」とキレの良い言葉で決議を非難する。この市議は、次のようにも言っている。
「本来ならそうした決議案には他の議員などが提案議員らに『おかしい』とアドバイスするものだろう。理解に苦しむ決議案を可決した議員には目を覚ましてほしい」
この優しい感じのトーン。完全に決議した側を見下している。まあ、そうだ、議員としておかしいから辞職しろと言った側の論理が議員としておかしいのだから。