日本語と少年サッカー

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サザエさん長寿の秘訣は歌詞にあり


一体いつから放送しているのだろうという位の超長寿番組。
主題歌もお馴染みすぎる。

サザエさんにはオープニングとエンディングの2曲がある。
まず、これらを別々に解釈する。

オープニング

本当に愉快か?

「おさかなくわえた」の方。
これ、他愛も無い歌詞である。
お魚をくわえたドラ猫を見つけたから、魚を取り返そうとしたか、もしくは取った猫をこらしめようとして追いかけるのに、靴を履くのを忘れた、というただそれだけの話。
また、買い物をしようと街にでかけたが、財布を忘れてしまって買い物ができなかった、というそれだけの話。
別に解釈するまでも無い話である。
単に、よく物事を考えずに行動してしまう人の行動事例を挙げているだけである。

時代による価値観の遷移

しかし、これが、どうして「ゆかいなサザエさん」「陽気なサザエさん」につながるのか。
サザエさんはもともと、第二次大戦後しばらくして新聞に連載が始まった4コママンガであり、考え方や行動のベースには、現在と異なる価値観がある可能性は非常に高い。 アニメの毎回のエピソード自体は、それをベースにしながらも現代流にアレンジされているが、主題歌の方は、ずっと変更が無く、昔の価値観をそのまま引きずっているのではないだろうか。
魚を取って逃げた猫を追いかけて裸足で追いかけたり、街に出てから財布を忘れたことに気づいたりといったエピソードは、当時は笑えたのであろう。爆笑とまではいかないでも、くすりと笑えるものだったのではなかろうか。
しかし、現代ではどうか。
これで笑えるか。
現代において、このエピソード自体に対しては全く笑えないであろう。

歌詞は伝えたいことが伝われば良い

では、歌詞を改定すべきではないか。
「ゆかいな」や「ようきな」にちゃんと対応するようなエピソードに書き換えるべきではないか。
しかし、実際この歌詞は、(ちゃんと調べたわけではないが)何十年も変わっていない。
ここで、ちょっと考えを変えてみよう。
「おさかなくわえた」や「かいものしようと」のエピソードは、現代ではちっとも「ゆかい」でも「ようき」でもない話であるが、これらを、「ゆかい」もしくは「ようき」なエピソードであると思いなさい、と言われれば、一応、そう思うことはできる。つまりサザエさんのオープニングの歌詞は、サザエさんが「ゆかい」で「ようき」な人であると視聴者に伝えることが重要で、そのエピソードが、自分にとって、本当に「ゆかい」で「ようき」なものとして捉えることができるかどうかなどはどうでも良いのである。

高視聴率の仕掛け

繰り返しになるが、2つのエピソードは、「おっちょこちょい」や「一つのことに注意が向いたらそれしか頭に無くなり、周囲が全く見えなく、状況を正しく把握し論理だった行動が取れない」事例に過ぎないのであって、「ゆかい」や、ましてや「ようき」なものとは昔の人でも理解できない可能性はある。
だからこそ、この歌詞は、例示されたエピソードの妥当性は重要ではなく、「サザエさんは『ゆかい』で『ようき』な人であると思う」ように聴く者を導くことが主題なのである。
毎週毎週日曜日の夕方に「ゆかいなサザエさん」「陽気なサザエさん」と繰り返し聞かされれば、誰もが、サザエさんは愉快で陽気なんだとすり込まれるであろう。
そして、しばらくすれば、「サザエさん」と聞いて「愉快な陽気な人」と脳の中で直接反応するようになる。
そうなればしめたもの。
視聴率は安定的に上昇するであろう。
サザエさんが長寿番組であることは、この主題歌の貢献も見逃せないはずである。

エンディング

そんなばかな、と思うでしょう。
しかし、エンディングの歌詞も考えるとこれを認めざるをえなくなるのです。

なかなか出てこないサザエさんの名前

エンディングの歌詞を思いだしていただきたい。
「…今日は楽しいハイキング」まではサザエさんのサの字も出ない。
そんなんで間奏に入ってしまって大丈夫なのかと思うが、間奏は異様に長い。

ようやく出て来たら

長い長い間奏を経て、「ほらほらみんなの声がする」と来る。何の声だと思えば、「サザエさん、サザエさん、サザエさんは愉快だな」だそうだ。
みんながサザエさんは愉快だなと言っているのか、みんなの声が愉快なサザエさんの言動で引き起こされたものなのかはともかく、何の説明も無く「サザエさんは愉快だな」と言い切っている。
前半の歌詞や長い間奏は何だったんだというくらい唐突なこの言葉。
これこそがオープニングの「おさかなくわえた」から続く「サザエさんは愉快で陽気だ」キャンペーンの締めくくりであったのである。
これで納得いただけるでしょう。

オープニングもエンディングも視聴率のために

サザエさんは、長寿番組にするための仕掛けを、テーマソングに組み込んでいたのである。
ちなみに来週の予告の後の「ジャンケンポン」という毎週の繰り返しにも企みが透けて見える。あそこまで見ないと気が済まないという視聴者を多く生んでいると思われるが、これにより、本編のアニメが終わった後のCMの際にチャンネルを変えられてしまうリスクを軽減しているのである。
以上、サザエさんは恐るべき洗脳計画に基づいて、裸足でドラ猫を追いかけたり、財布を忘れて街まで出掛けていることを視聴者は知らねばならない。 サザエさん長寿の秘訣は歌詞にあり