時々のこと

子どものサッカーについて。小学校から遂に高校までたどり着きました。その他時々のこととか。

サガン鳥栖は、チャレンジングな経営から小国王の経営になって失速した


サガン鳥栖は、20億円という経常赤字を出し、チーム存続の危機となってしまっている。これは、挑戦者としてのチャレンジングな経営から、万能感溢れる小国王の経営に移ってしまったことによる当然の結果である。松岡大起、本田風智という若い才能は、このチームから羽ばたこうとしている。火を消してはならないが、余計な火は消すべきである。

チャレンジングな経営

佐賀県鳥栖市という、都会とは言えない都市を本拠地にするチームは、竹原社長の手腕により、拡大成長し、2012年のJ1初昇格以降、降格のないチームとなった…とされる。これは、恐らく社長のチャレンジングな経営が功を奏したからといえよう。2018年頃までは、社長の経営手腕は絶賛されていた。トーレス獲得も、Twitterでは驚きを持ってしかしポジティブに評価されていた。

小国王の独裁経営とCygames

しかし、このチャレンジングな姿勢は、成功を重ねるにつれ、注意深さを失ったと考えられる。2018年の佐賀県のプロバスケットチームであるバルーナーズ設立にまつわる騒動やトーレス獲得にまつわるゴタゴタに始まる、小国の国王の独裁政治のような雰囲気を醸し出していた。トーレス獲得は、サガン鳥栖の経営体力からみたら無謀であるのは明らかであるから。状況から見れば、サイゲームスから得られた広告収入をそのままトーレスの年俸にスライドしてもまだ足りないというのは、組織の規模からして、どう考えてもおかしいといえる。結果、2018年度をもってサイゲームスがスポンサーから降りる。これとともに他の複数社もスポンサーから降りる。大スポンサーであったCygames側が、サガン鳥栖の経営が身の丈に合わないものだと危惧したことがきっかけとなったと言われるが、スポンサーからの広告収入に売上の多くを依存するチームとしては、そこで振り返るべきであったのだろう。しかし、チームは、というより社長は、前を向くことを選ぶ。これが、2019年度にCygamesがスポンサーから離れることにつながる。2020年度は、更にDHC がユニフォームの胸スポンサーから降りている。前を向くと判断した代償は大きい。

小国王の夢

竹原社長は、2017年度までの拡大に次ぐ拡大成長の成功体験を経て、J1優勝を視野に入れてしまう。これは恐らく社長としては、成長継続の1つのゴールで、ファンや選手への還元のあるべき姿と考えたのだと思う。その一環として大物選手との相次ぐ契約につながる。しかし、これは大口スポンサーには無謀に映る。当たり前である。5億円もの金額を広告費用として払っても、1選手の年俸にも満たないのだから。その選手と契約しなかったら、5億円もの金額が、他のことに使える。5億円…選手全員の年俸を2千万円上げることができる金額。それを1選手に、しかもそれではまだ足りないのがトーレスの年俸。過去最高でも43億円の売上という会社規模を考えたらあり得ない投資である。

ビジネスはシビア

小国の国王政治の雰囲気を前面に出してから翌年の2019年度決算で、直接の影響が出てしまうのがビジネスの世界の怖いところ。サガン鳥栖は、20億円の経常赤字を出してしまう。これは、スポンサーがあっさり逃げていったためである。広告収入が前年度比で3分の1近くとなってしまうのである。強烈である。チャレンジャーであり続ければ良かったのだろうが、チャレンジャーではなく、成功が続いたことによる万能感を得たが故に道を誤ったと考えられる。

佐賀県プロサッカー振興協議会

J2時代の2004年にもサガン鳥栖は、存続の危機に立たされている。この時は、県知事を会長とする佐賀県プロサッカー振興協議会を設立し、県を挙げての支援でチームは留まることができた。しかし今年度、ある意味人災的なサガン鳥栖の危機において、この協議会は再び強力な支援を行うのだろうか。しかしそもそもこの協議会、ウェブページの解説がないようで、実態がつかめない。ピンチの時に表に出て来るのであろうか。ならば今がその時であるが。

強くなってもチームが消滅したら何も残らない

竹原社長は、チームを強くするには良いのだろう。しかし、チームの経営という点で、チームが大きくなるにつれて、どこかで身の丈を超えてしまい、方向を誤ってしまったのだろう。チームが消滅してしまってはどうしようもない。

天皇杯決勝がチーム最後の試合で、それに勝ち優勝してチームが終わるというフリューゲルスのケースは華々しいが、組織運営としては全く駄目である。何がダメかを洗い出して修正することで、サガン鳥栖というチームは、なんとか生き残って欲しい。